貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
「ここは客用寝室です。こちらで風呂と着替えをしなさい。」

そう言うと、たたまれたグレーのスエットを、つきつけた。

「あとこれを・・・私のものだが、取りあえずこれを着ればいい」

「ありがとうございます・・・」

ジェシカは片手で、何とか受け取った。

「終わったら話があります。
階下の居間に来るように」

そのまま、アレックスは階段を下りていった。

やっぱり解雇通告だろう。

食べ放題天国はもう終わりだと思うと、小さなお化けはうなだれて、客用寝室に入っていった。

中央に天蓋付きの大きなベッド、奥に洗面所とトイレがある。

お風呂のお湯はたっぷり出るし、
ボディソープもシャンプーもフランス製の高級品で、薔薇の香りがする。

バスタオルもフカフカで、何と肌触りのよいことか。

「はぁーーー」

大理石仕様の洗面台の前で、ジェシカは脱力して座りこんだ。

窃盗の疑い・・・今回で2度目だ。

銃を突き付けられた時は、心臓が止まるかと思ったけど、
ああ、そうだ。
彼が下で待っていると言ったのだ。

時間がかかると、お怒りが増すだろう。

ジェシカは手早くドライヤーを使い、手櫛で何とか体裁を整えた。

くせ毛で、すぐにクルクルになってしまうので、まとめるのに手間がかかる。

スエットはぶかぶかだが、あのハーブとグリーンの高級な香りがする・・・

この香りに包まれる女性は・・・
どんな人なのだろうか、ふと考えがよぎった。

ランス所長は女性関係が派手って言っていたけれど・・・ジェシカは振り払うように頭を振った。

今はそんな事を考えている場合じゃない!

脱ぎ捨てたシーツを軽くたたむと、
階下に降りた。
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