貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
新しい仕事の依頼
<新しい仕事の依頼>

「お待たせして、申し訳ありません」

居間の暖炉は火が入り、アレックスはその脇のソファーで本を開いていた。

サイドテーブルには、ブランデーと小さめのグラスが置いてある。

「そこに座ってください。仕事の話なのですが」

やっぱり、来たか・・・

ジェシカは小さなため息をつき、そばにある椅子に座った。

「設置工事が、明後日で終了と聞いています。
あなたの次の仕事ですが、決まっていますか?」

「いえ、何も・・・これから探します」

それを聞いて、アレックスの口角が
ふっと上がった。

「それはよかった。私の仕事を頼みたいと思っていたので」

ええええ?

ジェシカは想定外の言葉に、顔を上げた。

「その・・・どんなお仕事ですか?」

アレックスは、本にはさんであった1枚の写真を差し出した。

「この女性に・・・なってもらいたいのです」

かわいらしい女性が、笑顔で写っているポートレート。

「はちみつ色の髪、あなたと同じ色です。
背格好も同じくらいだし、化粧をすれば、かなり似た感じになると思うのですが」

ジェシカは写真を手に取ったまま、
首をひねった。

「それで・・・私は、何をすればいいのですか?」

アレックスは暖炉の火を見ながら、言葉を続けた。

「療養施設で、アルバート・ロートリンデンの話し相手をしてくれればいいです。
期間は・・・そうですね」

アレックスが言いよどんだ。

「たぶん、3か月程度だと思います。余命宣告を受けているので」

余命宣告という言葉に、ジェシカの心臓がはねた。

「その・・・話がよくわからないのですが」

相変わらず、アレックスの顔は暖炉の方を向いているので、表情が見えない。

「説明が足りませんでしたね。
アルバートは私の父親ですが、ガンと認知症を患っています。

息子の私のことも、わからない状態です」
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