貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
「バリーを外にだしてもいいですか?」

「ええ」

カートリッジさんの視線が冷たい。

ジェシカは急いで、厨房の出入り口からバリーを出した。

「今日はまず、美容院に行きます。
そこで、美容師とスタイリスト、メイク担当者と打ち合わせをします。
終わったら、スタイリストと服やバック、靴を選びます。
そして・・・」

ジェシカは小さく右手を上げた。

「その・・・質問してもいいですか?」

「どうぞ、疑問点を言ってください」

「カートリッジさんは、マーガレットさんと会ったことがありますか?」

珍しく、カートリッジが黙り込んだ。

「・・・何度かお見受けしました。
私の父がアルバート様の執事でしたので、手伝いに行った時にいらっしゃいました」

ジェシカは、立ち入った質問をしていると察したが、続けた。

「どんな感じの方だったのですか?」

「そうですね。華奢で・・・
妖精のように可愛らしい方でした」

華奢で妖精のよう・・・
かなりハードルが高い。

オレンジジュースをぐいっと飲み干すと、ジェシカは核心をついた。

「アルバート様の・・・愛人だったと聞きましたけど」

カートリッジは、鼻脇をかいて困った表情になった。
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