貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
「ロートリンデンの奥様には、子どもができなかったので、アルバート様はその子を、養子として迎え入れる提案をしたのです。

しかし、マーガレットさんは、子どもを取られると思ったようです。

身を隠すために、車で国境近くの峠を越えようとして、事故がおきました」

「事故・・・?」

ジェシカが息を飲み、カートリッジはあごに手をやり、言いにくそうに

「ハンドルを切りそこなって、がけ下に転落をしました。

マーガレットさんは即死でしたが、奇跡的に子どもは外に投げ出されて、無傷だったのです」

ジェシカは、考えていた疑問を口にした。

「その子どもっていうのは・・・」

「アレックス様です」

ジェシカとカートリッジは、同時にため息をついた。

「アレックス様はこちらに引き取られ、専属のナニーが世話をしました。

6歳から寄宿学校で生活をなされましが、奥様ともアルバート様ともうまくいかず、夏休みもサマーキャンプを転々とされていましたね。

クリスマスも、お帰りになることはなかったようです」

ジェシカは、突然の事故でいなくなった父と母の顔を思い浮かべた。

クリスマスにはモミの木にみんなで飾り付けをして、七面鳥を焼いた。

バリーが盗み食いをしようとして大騒ぎをして・・・

涙がでるほど笑い合った、幸福な日々がそこにあった。
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