貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
余命宣告を受け、記憶が定かでない父親と・・・
彼はどう向き合おうとしているのか。
「余計な事を言ったかもしれません。アレックス様には・・・」
「ええ、わかりました」
ジェシカが、「そこはわきまえている」というようにうなずくと、カートリッジは安堵の表情を浮かべた。
「私はアルバート様が心おだやかに、すごされることを祈っています」
そう言うと、指を組み祈るしぐさをした。
ジェシカも指を組んだ。
私は・・・
私にできる仕事をこなすだけだ。
弟とバリーを守るために。
ワンワン・・・ワンワン
遠くで、バリーが興奮して吠えている。
野うさぎか何かを見つけたのか。
カートリッジが立ち上がり、懐中時計を取り出した。
「すぐに出ないと、約束の時間に遅れてしまいますね。
それと、夕食はホテルでフランス料理を。
アレックス様とご一緒にお願いします」
なるほど、最終チェックが入るのか。
もし、彼の満足のいく出来栄えでなかったら、解雇されるのだろう。
ジェシカの胸は、不安で重くなった。