貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
同い年の女の子たちが、恋バナやファッションのおしゃべりに楽しんでいたとしても、
自分には関係のないことで、泥だらけのつなぎを着て必死に働く。

「あなたは・・・強いですね」

そう言って、アレックスは目を閉じ、口元で指を組んだ。

「マーガレット・ハウザーにその強さがあったなら、人生が違っていたかもしれません」

写真の中で微笑む彼女は、かげろうのようにはかなげに見えた。

「強くは・・・ないです。
毎日を必死こなすだけで、精いっぱいです」

アレックスは別の想いを含む視線で、ジェシカをみつめた。

「守るべきものがあると・・・強くなるのでしょうね」

その声が遠くに聞こえ・・・

飲みなれないワインが、緊張を溶かして眠気を誘う。

ジェシカの頭がぐんと前のめりになり、危うい所で皿に突っ込みそうになったので、アレックスがすぐに皿を移動させた。

そこからは記憶がとぎれとぎれで、
バリーが耳元でクンクン臭いをかいでいるのを覚えている。
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