貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
ジェシカの不安

ワンワン・・・ワンワン・・・

遠くでバリーの吠え声が聞こえる。

ジェシカはベッドの中でもぞもぞ体を動かし、次に目を開けた。

んんん・・・どうなっている?

掛け布団をはねのけると、着ているドレスはしわくちゃで、つけまつげが虫のようにシーツにへばりついている。

ワンワン・・・ワンワン

髪がもつれたまま、ジェシカが窓際に駆け寄り外を見ると、森に向かって走っていくバリーの姿が見えた。

椅子に、抜け殻のようなストッキングがひっかかり、バックとヒールサンダルは床に転がっている。

誰がここまで運んでくれたのか・・・そう思うと、よけい頭が痛くなった。

まず、やらねばならないこと。

化粧を落とし、シャワーを浴びて着替えをしたら、カートリッジさんに今日の予定を聞かねばならない。

クローゼットを開けると、スタイリストが選んでくれた、カジュアルなものからドレスまでずらりとハンガーにかかり、上の棚にはバックが、下には靴の箱がつまれている。

これもレンタルなのか?
カートリッジさんに聞いておかねばならない。

ジェシカはクローゼットの前で悩んだが、ボータイの白ブラウス、焦げ茶のフレアスカート、モスグリーンのカーディガンを選んだ。
< 46 / 77 >

この作品をシェア

pagetop