貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
ジェシカの不安
ワンワン・・・ワンワン・・・
遠くでバリーの吠え声が聞こえる。
ジェシカはベッドの中でもぞもぞ体を動かし、次に目を開けた。
んんん・・・どうなっている?
掛け布団をはねのけると、着ているドレスはしわくちゃで、つけまつげが虫のようにシーツにへばりついている。
ワンワン・・・ワンワン
髪がもつれたまま、ジェシカが窓際に駆け寄り外を見ると、森に向かって走っていくバリーの姿が見えた。
椅子に、抜け殻のようなストッキングがひっかかり、バックとヒールサンダルは床に転がっている。
誰がここまで運んでくれたのか・・・そう思うと、よけい頭が痛くなった。
まず、やらねばならないこと。
化粧を落とし、シャワーを浴びて着替えをしたら、カートリッジさんに今日の予定を聞かねばならない。
クローゼットを開けると、スタイリストが選んでくれた、カジュアルなものからドレスまでずらりとハンガーにかかり、上の棚にはバックが、下には靴の箱がつまれている。
これもレンタルなのか?
カートリッジさんに聞いておかねばならない。
ジェシカはクローゼットの前で悩んだが、ボータイの白ブラウス、焦げ茶のフレアスカート、モスグリーンのカーディガンを選んだ。