貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
「はい・・・ありがとうございます・・」

ジェシカは手渡された書類に、ついている写真を見た。

広大な敷地、緑の濃いつたにおおわれた、赤レンガの古びた館。

車寄せの前に大きな噴水があり、周囲は紅葉の美しい雑木林に囲まれている。

「これがアレックス・ロートリンデンの別邸だ。
ロートリンデン家は貴族で、昔はここを狩場として社交に使ったらしい。

現当主は、いくつもの会社を経営する大金持だ。
プライベートジェットを持っているくらいだからな。
ここは現在、ほとんど使われていないらしいが・・・
うちの親会社が管理をまかされている」

「はぁ・・・すごいですね。アラブの大富豪と同じですね」

ジェシカは、ほうとため息をついた。
私の知らない世界が、そこにある。

「明日、現地で家令の面接がある。きちんとした格好をしろよ」

そう言うと、ジェシカの首や袖がよれよれのTシャツと、裾が擦り切れたジーンズを見た。

「カレイ・・・って誰ですか?」

「執事の上、その家を取り仕切る責任者だとさ」

華麗なる一族なのか?

とにかく与えられた仕事を、一生懸命やる。
崖っぷちの自分には、選択肢がないのだ。

「がんばろうね。バリー」

それに答えるように、ペロリとジェシカの指先をなめた。
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