貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
しかし、目の前のジャーキーはかなりの高級品なので、受け取らないわけにはいかない。

「・・・ありがとうございます。
バリーも喜びます」

ジェシカは口ごもりながらも、袋を受け取った。

バリーは「早くくれ」とばかりに、ジェシカの体の周りを八の字で回遊している。

「コーヒーをいれましょうか?」

アレックスが帰宅すると、カートリッジさんが、すぐにコーヒーの準備をしていたのを思い出した。

「ああ、ありがとう。その間に着替えてきます」

そう言うと、アレックスは、二階に上がっていった。

コーヒーポットとカップをトレーに乗せて、ジェシカが居間に行くと、
くつろいでいるアレックスの膝に、バリーが鼻のせて、ジャーキーをねだっている。

「バリー、こっちに来なさい」

ジェシカが指をならすと、バリーはしゅんと尻尾を下げてジェシカの元に戻った。

「甘やかしてはいけないのですか?」

アレックスが、心外そうに聞くと、

「ええ、バリーは、仕事をする犬ですから。ペットとは違うので」

ジェシカが答えると、アレックスが微笑んだ。

「私は甘やかしたいな。帰るとちゃんと出迎えてくれるし、すごくかわいい」
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