貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
ジェシカの餌付け
その日以降、アレックスは、夜中でも帰ってくるようになった。
夜、ジェシカの足元に寝そべっているバリーが、耳をピクリとさせると、むっくりと起き上がり、玄関に向かう。
タシタシタシ・・・
「おかえりなさいませ」
一人と一匹の出迎えに、アレックスは顔をほころばせた。
「これは・・・君にお土産です」
アレックスが小さな手提げ袋を差し出すと、受け取ってくれるのか、少しためらっている様子だ。
「チョコレート、好きかなと思って。ああ、これは餌付けではないです。
よくやってくれているという、感謝の気持ちです」
餌付け?私はバリーと同格なのか?
「ありがとうございます」
ジェシカは吹き出しそうになったが、その心使いに、きちんとお礼は言った。
袋の中をのぞくと、金と銀のリボンがかけられた、黒い箱が入っている。
「これって、めちゃくちゃ高級なやつじゃないですか!!」
ジェシカのテンションが一気に上がった。