貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
ジェシカは、何とかアレックスの腕から逃れると、バリーに目もくれず、部屋から小走りに出ていった。

そのまま寝室に戻ると、ベッドに倒れ込み、枕に顔を埋めた。

心臓がドキドキして、顔も耳も一気に赤くなる。

緊張を緩めるどころではない!!

あのまま・・・いや、次はどうなっていたのか・・・
想像してしまうではないか。

ドレスを着たあの時も、「愛らしい・・・」とささやかれたし・・・

ジェシカは仰向けになり、自分の頭を拳でグリグリ押した。

彼は自分に、マーガレット・ハウザーへの想いを重ねているだけであって、勘違いをしてはいけない。

もしかしたら、からかっているだけなのかもしれないし。

ガシガシガシ

ドアの向こうで、ひっかく音が聞こえる。

「ダメっ!バリー!ドアを傷つけちゃう!!」

ジェシカが急いでドアを開けると、
バリーがお座りをして、尻尾を振っている。

その首輪には、チョコレートの手提げ袋が下がっていた。
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