貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
バリーのショータイム
犬が芸をするらしい。
話はあっという間に施設内に広がったようで、開始少し前の時間から、
車いすの高齢者たちが、陽の当たるテラスに集まってきた。
中庭でジェシカはピエロの恰好で、
バリーは赤のチェックの蝶ネクタイを首につけて準備万端だ。
ストレッチャーで運ばれてきたアルバート・ロートリンデンが中央にいて、看護師が機械とチューブの接続状態を確認していた。
後ろに、アレックスが立ち、専属の介護人と話をしている。
ジェシカが開始の合図をすると、軽快な音楽がラジカセから流れ始めた。
♪♪・・・
「皆さま。今日は特別に、ジェシカ&バリーがショーをしてくれます。
お楽しみくださいね」
パチパチパチ・・・職員の口上に、まばらだが、拍手が起きた。
「まずは大ジャンプをご披露します」
ジェシカがフラフープを掲げ、バリーに合図をすると、ジャンプをして、輪をくぐり抜けた。
次にひもを取り出して、両方の縄を職員に持ってもらい、グルグルと縄をまわしてもらう。
「お次は縄跳びをやります」
まず、ジェシカが縄を飛ぼうと入ったが、足首に絡んで失敗。
観客に向けて、足をダンダン踏み鳴らして、くやしそうなジェスチャーをすると、笑いが起きた。
次にバリーが縄をくぐり抜けると、「一緒に飛ぼう」と、ジェシカの上着のすそをずるずると引っ張る。