貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
そこでも、観客の笑いが起こった。

「バリーは天才犬ですから、計算もできるんです!」

ジェシカが大きな画用紙に計算式を書き、その答えの数だけバリーが吠えるのだが、もちろんジェシカにできない計算は、バリーにもできない。

ワンワンワン・・・・

吠え終わると、お手をして終了の合図をする。

「最後は探索ゲームをやります。
さて、隠れてもらう人、募集しますよ?」

打ち合わせどおりに、男性職員が勢いよく手を上げた。

「それでは、こちらにお願いします。もしよければ、ハンカチを貸していただけますか?」

職員はジェシカにハンカチを手渡すと、

「それでは10数えている間に、どこかに隠れてくださいね」

ジェシカはアイマスクをして後ろを向き、バリーも同じように脇に控えると、その間に男性職員が姿を消した。

「1・・・2・・・」

目隠しをしたジェシカにも、観客たちの笑い声が聞こえる。

どこか、とんでもないところに身をかくしたらしい。

「・・・9、10・・・!!」

ジェシカがくるりと振り返ると、目隠しを取り、バリーの鼻先に臭いのついた布を当てて、命令をした。

「バリー、捜して!!」
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