貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
ガレージと言っても、車が10台くらいは入りそうだが、駐車している車はなく、ガランとしている。

「ここの2階が、運転手の待機場所になっているんだと」

「でも車が全然ないですね」

「ここは使っていないと聞いたぞ。
当主は一等地のホテル住まいで、別にお屋敷もあるらしい」

ランス所長は、バリーにリードをつけているジェシカを確認するように見て、

「おい、バリーの体をよく拭いておけ。あと、その上着に犬の毛がついているぞ」

ジェシカは古びたかばんから、バスタオルを出してバリーの体を拭き、
次にガムテープを取り出して、自分の上着についている毛も取った。

「大丈夫です」

ジェシカが答えると、バリーも準備万端というように、尻尾をブンブン振った。

コンコン

2階のドアを開けると、長身で白髪の紳士がこちらを見た。

「失礼します。ラブストック警備のランスです」

ランス所長は腰を90度に曲げてお辞儀をしたので、ジェシカもあわてて真似をした。

「このたび担当いたします、ジェシカ・バリントンです」

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