貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・

「アルバート！！愛しているわ！
あなたを愛している！！」

これを話しているのは・・・誰？・・・

ジェシカがふっと、アレックスを見上げた。

「アレックス、手を握ってあげて。
お願い・・・」

その呼びかけに、アレックスは一瞬狼狽した表情を見せたが、
ベッド脇にひざまずき、父親の手を握りしめた。

「アルバート、アルバート・・・
愛しているわ。私がわかるでしょう？」

アルバート・ロートリンデンの目が少し開き、ジェシカを見た。

その瞳に、最後の生命の輝きが宿っている。

酸素マスクでおおわれた口が、わずかに開いたが、声はでない。

「アルバート！！・・・あなたを愛している・・・」

ジェシカ、いや、マーガレットが、
アルバートの耳元で語りかけると、
安心したようにアルバートの目が閉じられた。

その手から力が抜けたと同時に、

ピーーーーー

心拍停止を知らせるモニター音が、病室に響いた。

バタバタと、廊下を走ってくる音が重なる。

医者と数人の看護師が病室に走り込んでくると、すぐに医者は胸に聴診器を当てた。

そのままアレックスの方を見ると、静かな声で言った。