貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
「御臨終です。20時34分。御愁傷さまです」

ジェシカは立ち上がれなかったので、看護師に支えられて廊下の長椅子に座らされた。

しばらくしてアレックスが、病室から出てくると、ジェシカの隣に座り込み、頭を垂れた。

「母が・・・マーガレットが迎えに来てくれたのでしょうか・・・」

大きく息を吐き、ジェシカの手に自分の手を乗せた。

「私も・・・そう思います」

愛しているわ、アルバート・・・

まだジェシカの体の中で、こだまのように響いている。

「それならば・・・よかったです」

アレックスはうつむかず、天井を見上げた。

アルバート・ロートリンデンの魂は、マーガレットの胸に抱かれて天に向かったのだ。

「よかったです・・・」

アレックスがもう一度繰り返すと、
ジェシカも深くうなずきながら、あふれる涙をぬぐった。
< 71 / 77 >

この作品をシェア

pagetop