貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
「父は母が亡くなってからも、多くの女性と付き合っていました。

母は都合のいい遊び相手で、簡単に捨てたのだと私は思っていました」

アレックスは、濡れた瞳でジェシカを見つめた。

「でも・・・君のマーガレットを見て、考えが変わったのです。

父は愛する人を失って、その悲しみを埋めるために、あのような行動を取ったのではないかと」

愛する人を失う・・・

父と母が亡くなったと聞いた時、
足元が崩れ落ちるような恐怖を感じた。

なにかで、心をまぎらわさないと、
生きていけないという思う日々。

必死に働き、泥のように眠ることで、時間をやり過ごしていた。

その中で、バリーの温かさと弟の存在が・・・
唯一の支えであった。

「君のマーガレットは、私の覚えていない幸せな時代を掘り起こした」

うううう・・・

嗚咽がもれて、アレックスの肩が震えたので、ジェシカはその肩を抱きしめた。

マーガレットならば、そうしただろうと思ったからだ。

「お二人とも、あなたを愛していたと思います。
そしてマーガレットさんは、心から・・・
アルバート様を愛していたのだと思いました」

アレックスが涙で潤んだ瞳で、ジェシカを見つめた時、
横からバリーが、ジェシカの顔をべロリとなめた。
< 74 / 77 >

この作品をシェア

pagetop