好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!
「は。おれみたいな役者がおってたまるか」
 親しげに桐沢が手を榎原の頭に伸ばしてくるのを彼女は片手で振り払った。蒔田の前で。

 親しい姿なんか、見せたくない。

 彼が二人の間を通ろうとしたので、彼女は桐沢の来た方へ戻り、彼を見送ろうとした。
 だが、桐沢は蒔田のまえで立ち止まる。「さっきの話、本気なんでしたらおれが」

 彼は挑戦的に、榎原紘花に一瞥をくれてから言った。

「紘花ちゃんに手ぇ出したとしても、蒔田さんはなんとも思わんっつうことですよね」

 え。

 ええ!?

 と彼女は内心で叫んだ。どこをどう聞き違えたら、そんな話になるのか。
 蒔田は、今後一切と言いかけただけではないか。

 おれと関わらないでくれ。

 そんなことを言おうとしたのだろうか?

 いまの蒔田を見ても分からない。無表情だ。挑発されているのが明らかなのに。
 余裕しゃくしゃくで軽口を叩くいつもの感じとも違う。
 榎原は彼の唇が動くのを待った。

「上司としては、部下のプライベートに干渉する趣味は無い」

 すこーん、と頭を叩かれたような感覚が突き抜ける。

 教科書通りの答えだった。
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