好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!
 大学生の顔を間近に見た。きょとんとした表情。だが彼女は続けた。

「もし聞かれたらあっちの出口を右に行った、って答えてくれますか」

「ええとはい。分かりました……」

 その返事を受けて、彼女は、左手の出口から出る。と急いで走りだし、左に曲がり、建物の物陰に身を潜めた。

 鼓動が速い。右を見ればごみ箱。野良猫がお座りをしていた。にゃあ、と一声鳴いたので、彼女は焦って人差し指を立てた。

(しぃーっ)

 理解したのか分からないけれど、野良猫は、目の前を通りすぎていった。

 物陰に身を潜め、待つ時間がものすごく長く感じられた。十分くらい待てばいい、と思っていた。居なければ諦めもつくだろう。それでも、建物から顔を出してさっきの男がいるかどうかを確認する勇気もない。

 だから結局二十分以上その場で待った。

 恐る恐る、顔を出した。……誰の姿もなかった。

 拍子抜けしつつも、さっきのコンビニを通りぬけ、家路についた。

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