好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!
 彼女は、そういうのに耐性があるらしい。日頃そんなに大きな声など出さないのに、家族が相手だと違うのか、それとも地方出身者の特徴なのか。……というより、父親と合流する前の貴重な打ち合わせの時間を、なにもまだ遠くにいる父親に叫び続けることで費やさなくても。

 と蒔田は思うのだが、彼自身の性格上の問題で、口にすることはならなかったのだった。


 * * *

 榎原紘花の父親は、見た感じ、ごく普通の中年男性だった。

 これといった特徴もない。通りすぎても気づかれないタイプかもしれない。

 あの年代特有の油っこさもなく、むしろ清潔感を感じさせる。

 髪に白いものがやや混じっているが、年相応であり、髪の量が多く、前髪を真っ直ぐに下ろした髪型。髪すべてをポマードで撫でつけるキザったらしさとも無縁。素直な性格が髪型から伺える。

 服装も、例えば彼女世代の女性が一緒に歩くのを嫌がるようなものでもなく中庸。

 平均的な人間だと蒔田一臣は判断した。

「初めまして。時間を取らせてすまないね。紘花の父親の、榎原(えのはら)俊之(としゆき)と言う。蒔田くん、だったね」
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