好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!
彼女の父親は手を差し出した。
平均的な人間。
よりもややフレンドリーかもしれない。
握手に応じつつ、蒔田は彼に対する第一印象を修正した。「遠いところをどうも、ありがとうございます……」
横で榎原紘花が吹き出しそうになっているが、知るものか。
あまりの棒読みっぷりに我ながら情けなくなる。こうした挨拶のたぐいが本当に不得意なのだ。ビジネスの場面では、作った冷たい話し方である程度通用するのだが。
初対面の相手は苦手だ。
不必要に気を遣う。というより、遣わせているという感覚が、蒔田一臣は苦手だった。
どのみち仲良くなれないのだから。
ひととひとなんて。
「いや、ぼくのほうこそ急に時間を作ってくれてすまない」彼女の父親・榎原俊之は蒔田の話し方を気にしていないのか、この場にふさわしい微笑みを浮かべ、一礼をした。そして周りを見回し、「こんなところで立ち話もなんだから、どこか入ろうか」
「まだ時間早いけど、どこかお店入る? それともお父さん、うちに荷物置いてくる?」
見れば、榎原俊之はキャスター付きキャリーケースを持参している。