「帰りたくないんだろ」~好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!~

 唐突に、一昨日のやり取りが思い出された。

 選ばれなかった、事実。

 捨てられた、現実。

 かよわくって、愛くるしいあの子を選んだ、彼。

(啓太の馬鹿……)

 胸が締めつけられる。
 涙が出そうになるのを、彼女は、奥歯を噛んで、堪えた。

 職場では、男女を意識することはない。といっても。

 徹夜の仕事はあんまり女性には割り当てられないし、最悪終電までには帰れるよう配慮はされている。以前、榎原がついたプロジェクトではそうだった。

 男と並んで肩肘張って臨むはずだった仕事で、案外、『女』扱いされていて。

 肝心の彼氏には『女』扱いされず、捨てられた。

 捨てられちゃった……。

(あやばい、まじで泣きそ……)

 彼女は下唇を噛んだ。涙声になるのだけは阻止したい。「お、さきに、失礼します」
「榎原くん。

 おまえは、悪くない」

「ふえ?」いきなり言われ、変な声が出る。手で目元を擦ってから、振り返った。

 蒔田が、真っ直ぐ、彼女のことを見ていた。
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