好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!
 けれども、ときどき彼女が不満を感じるのは、父親が、父親の顔しか見せてくれないこと。榎原俊之の『自由な雰囲気』の所以たるものをひとかけらも見せてくれなかったこと。

 不満があるとしたらそんなところだ。それから。


 娘が、家柄を気にする相手と結婚を考えた場合に、打ち明けなければならない責任を背負わせたこと。


 その一場面に、現在、彼女は出くわしている。

「……蒔田さんにとって、親は、どんな存在ですか」
「権威のある存在、少々とっつきにくい存在、かな」問われた蒔田は肩をすくめ、そして、目線を下げる。「……親からすると、扱いにくい子だったと想像がつく。昔から無口だったから、なにを考えているかよく分からないとは言われた。兄貴とは仲が良かったが……」

 お兄さんのことじゃなくて、両親のことを聞いているのに。

 と、彼女は思ったが、指摘せずにおいた。兄の存在が、それだけ、蒔田一臣にとって重大なのだろう。

「お兄さんと仲がいいんですね」
「昔っから、兄が憧れで、ライバルでもありよき友だった。兄貴がいなければいまのおれはいない」
「ご両親も、お兄さんのことを可愛がってくれたんですか」
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