好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!
 新入社員を誘ったりするのは、彼らの様子を気にしているから。一見すると人間に対して無関心な男のようであって、存外情の深いところがあるのだと思う。

 それは、彼女がこれまで何度となくピンチを救われた場面や、様々なプライベートのことに協力してくれた場面を経験しているから、知っている。

 午後の仕事中も一言二言程度会話をする。つまらない、会議室予約の仕事も蒔田にさえ頼まれればものすごく嬉しいことに変化をする。


 彼の役に立てるのが、嬉しいのだ。


 彼に尽くすことが職務でもあるし役得でもある。彼が隣に居るならどんなことでも楽しめる。これからの人生を、彼と一緒に過ごせたらどんなに幸せだろう。

 その夢想は、ビジネスに1ミリも私情を割りこませない、彼のドライな態度に時として破られるのだが。

 ともあれ、幸せな気分を持続したままに定時ジャストで彼女の業務は終了する。残業をしないよう言われているのだ。彼の命令には逆らえない。

 従って、業務終了後に彼にかける言葉は常に「お先に失礼します」だ。


「ああ。お疲れ」


 その一言を胸に、温かい気持ちを維持したままに彼女は退社する。
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