好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!
「いえ、いえ、なんでもありません……」父は縮こまっておかずに箸をつける。榎原家は、料理が得意な人間が誰もいないので、伯母が帰省するたびにその料理の腕前の恩恵にあやかっている。

 母親の居ない彼らにとっては、おふくろの味のようなものでもあった。

「伯母さん……、エリカさんとかみんな元気ですか」

「ええ、みんな変わりませんよ……(とし)ちゃん、すこし飲みますか」
「ああ、ありがとう」
「紘花ちゃんも」
「わたしは、日本酒は……」彼女は首を振った。お酒に関しては、あまりいい思い出が無い。あらそう、と伯母は手酌をし、酒をあおった。この筑前煮なんか、日本酒とすごく合いそうだ。

 味のしみこんだごぼうが美味しい。

 一人暮らしをしていて、ごぼうなんか滅多に買う気になれない。

 手間をかけることが、美味しい料理への近道なのだ。急がば回れ。

「手間暇かけないと、美味しいものなんかできないんですね……」しみじみと彼女は言う。すると伯母が、

「紘花ちゃんも、年頃の娘なんですから、料理くらいできないと、困りませんか」
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