好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!
「そ、それじゃあ」いろんな感情を振り払うようにし、俯き、歯を食いしばった。「お疲れさまでした」涙声にならないよう努力した。顔をあげ、笑顔を作り、「あ。あたし、トイレ行ってから帰るんで、ここで失礼します」


「……お疲れ」


 小さく手を挙げ、蒔田は歩いて行く。

 消えていく。見えなくなっていく。

 そしてこの距離を埋められない永遠のものにしていく。彼女は――


 たまらず反対方向へ走りだした。


 トイレで泣くなんて生まれて初めての経験だった。


 こんなのは最初で最後にしたい、と彼女は思った。

 胸が苦しくて、きりきりと傷んだ。でもこんな痛みは継続しない。……元カレのときに経験したように、いっときのもので

 きっと忘れられる。

 一年後には、ああ、あんな恋もあったな、と笑ってるはず。

 あふれ出る涙を拭いながら、そう願った。


 *
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