好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!

閑話休題――彼女のコトなど

 コーヒー豆のかぐわしい香りが鼻腔をくすぐる。

 こうしてコーヒー豆をフィルターにセットし、豆を蒸らす時間が幸せだ。なにも考えずにいられる。


 なにも余計なことを考えずに。


『いままで言ったこと全部忘れてください。


 好きって言ったこととか全部全部――』


 なにがあったのだろう、と彼は思う。


 だが彼は聞ける立場にない。


『あたしは、蒔田さんのことを忘れます。もう仕事に私情は持ち込みません。


 だから蒔田さんも……


 忘れてください、あたしのことを』


 拒絶されたのだから。


 久々に、一日フルの休日。大好きなコーヒーを飲めるひととき。それを。
 
 仕事のことが頭から離れないのは職業病といっていい。

 因みに、彼女は、配置転換を彼女の上司である柏谷(かしわたに)に申し出ており、間もなく別プロジェクトに配属される予定だ。

 本社ではなく、客先勤務となる。本社勤務の蒔田とは離ればなれになるかたちだ。

 だからどうというわけではない。

 プロジェクトの移動なんてよくある話だ。

 ひととの別れも。
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