好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!

act34. 到達すべきその場所

「うー寒い」


 マンションを出た途端、彼女は肘を擦った。

 帰省するには、薄着だったかもしれない。

 長野の冬は、寒い。

 でもまあいいか、と彼女は思い直した。

(電車に乗って移動するだけだし、……電車のなかじゃどうせ脱ぐから)

 荷物は軽めにした。小型の赤いボストンバッグ。先方は、普段着でいいといった。それを真に受けて、ちょっとしゃれたくらいの、皺になりにくいワンピースを入れておいた。

 いまは、動き重視のジーンズだ。足元はブーツ。

(雪、降ってるかなあ……降ってないといいなあ)

 長野につけば、駅まで父が迎えに来てくれる。

 だから傘を持たないでも平気か。……と思ったけど空がどんよりとしている。

 玄関に傘を取りに戻り、再び鍵をかけた。

 冬はみんな暗い服を着て暗い顔をしている、だから彼女は敢えて淡いクリームいろのコートを羽織った。

 再び空を見あげた。

 暗くってどんよりした、冬物のコートみたいな空のいろ。


(まるで、あたしのこころのなかみたい……)

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