好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!
 降る、降る、と思ったら本当に降ってきた。しかもどしゃぶりだ。いきなり雨に降られた親子が、慌ててコンビニに駆け込む。自転車に乗ってるおじさんが、片手ハンドルで新聞紙で頭を覆う。

 いきなり雨に降られたときの、人間の反応って面白いなあ。

 と場違いにも彼女は思った。黙って傘をさす。青い傘だから途端に視界があおっぽくなった。

 大通りに出て、信号を待とうと思ったが、ばしゃばしゃ車通りが激しい。水しぶきの被害に遭いそうだから、彼女は、歩道橋にのぼることにした。

 誰もいない。

 彼女ひとりだ。

 濡れたコンクリートの階段を、一歩一歩のぼっていく。レインブーツにすればよかった、とこのとき思った。水はけが悪くって、雨の流れる階段。転ばないよう、ゆっくりのぼる。

 なにか、聞こえた気がした。

 男のひとのこえ。後ろからだ。

 まあいろんなひとがいるからな、と彼女は思った。

 階段の中腹までのぼったところで、その声が大きくなった気がした。

 気のせいだと思った。

 気にしないようにした。

 長い階段を登り切ったときにその声が。
< 223 / 270 >

この作品をシェア

pagetop