好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!
「そんな顔されたらどうしようもなくなるだろ」


 吐き捨てるように蒔田は言う。なんだか照れ隠しみたいに。

 空気が柔らかくなるのを感じ、彼女は瞳を開いた。「へ?」

「その、……そんな目で見るな。……止められなくなるだろ」

 なにを言っているのだろう、蒔田は。

 止める気なんかナッシングだったじゃないか。

 と恨みがましい目線をよこすと、今度は蒔田が自分から目を逸らした。なにかぶつぶつ言っているが内容がよく聞き取れない。責任が――とか、理性が、とか。

「あの聞こえないんですけど蒔田さん。はっきり言ってください」

 しばしの黙考ののち。

 蒔田が、重い口を開いた。「その、あれが、無い」

「あれって?」彼女は、まだ理解していない。

「その、あれだ。持っていない」

「あ」ここで彼女は気がついた。

 自分だけ至らしめられた理由。

「その、……持っていないのに最後までするわけにはいかんだろう」とかゆくもないだろう頬を掻く。


 意外と、真面目なんだ。


 そんなの、気にしないで突っ走る男のほうが多いと思っていたのに……。

 彼女は蒔田に好感を抱いた。
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