好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!
 彼女は、自分でそう感じることに、驚いていた。

「帰りたくないんだろ」

 そう思ったとき、ずばり、蒔田に言い当てられていた。

「ない、わけじゃないですけど……」黒い蒔田の瞳が自分を見ている。その瞳に見据えられると、彼女は、嘘がつけなくなる。「ありえないこともないです」
「さっきのじゃ足りねえのか」
「……なんのことですか」
「泣くのが」
「……ええと」

 答えづらい。

 先生みたいだ、蒔田の聞き方は。そんな風じゃなく。

 さっきの女に電話したときみたいに、愉しげに話して欲しいのに。

 そんな気持ちが生まれることに、彼女自身が、驚いていた。

(これって蒔田さんに、……)

「恋、してるんです」

 言葉が、自然に吐き出された。唐突なものにも関わらず。

「あの。ぐちゃぐちゃのしっちゃかめっちゃかなんですけど、あたし、蒔田さんのことが――」

 蒔田の口がすこし開いた。驚きでだろうか。


「好きです」


 *
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