好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!

act8. 空白

 恋とは、ある意味で暇つぶしだ。

 相手のことを考えているあいだ、他のことを忘れていられる。

 その日あった嫌なできごとや、過去の辛い恋など。

 榎原紘花にとって、蒔田に恋するということは、決して暇つぶしのためではなかったが、しかし失恋の痛手から目を背けるという一面を有してはいた。

 失恋を癒やすという役割は、仕事だけではこと足りない。

 日々の仕事のあとや休日などの空白の時間に、考えてしまうのだ。終わったことをいつまでもうじうじと。

 ああすれば良かった、こうすれば良かった。そんな不毛な時間の穴埋めにも新しい恋は、うってつけだった。

 例えそれが一方的な片想いであろうとも。

『職場の人間とつき合うなど考えられない』という蒔田の言い分は、ある種の希望を彼女の胸に残した。つまり、人間性を否定されたわけでもなく、可能性を否定されたわけでもない。蒔田が失恋したのは知っている。すぐに切り替えられるものでもないと分かっている。例えば自分が彼氏を忘れられないように。
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