好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!
 友情を犠牲にしてまで手に入れた恋だ。

「すいませーん、誰かウーロンハイ飲む方ほかにいます?」彼女は、蒔田に非常に薄いもはや烏龍茶に等しいウーロンハイを手渡しつつ、ほかの面々に尋ねた。はーい、と手をあげたのが二名。ちゃっかり、道林もそのなかにいる。

(先輩にウーロンハイ作らせるってどういう後輩よ)

 グラスに氷を入れる手つきが乱雑になる。――視線。蒔田と目がかち合った。

「そう思うくらいなら本人にやらせろよ」

(そう言えない、性分なんです)

 榎原はかぶりを振った。蒔田は、ちょっと笑ってグラスに口をつけた。

 そういう、蒔田のちょっとした動作や言葉が、榎原は大好きだった。

 道林は別の席で誰かと笑っている。蒔田が席を立つ。煙草を吸いに行くのだろう。今日び、居酒屋は喫煙可能なのが当たり前だが、蒔田が吸うときは決まって席を外す。外の空気を吸いたい性分なのだろう。

 自分が飲み会の場で手を動かしてしまうのと同じで。

「ミカちゃーん。ウーロンハイできたよ。二つ持ってって」
「はぁーい」道林が手を振る。蒔田と入れ替わるようにしてやってくる。

 そのときに彼女は、思った。

 離れて誰かと連絡を取っている可能性もあるのだ、と。

(あたしの知らない、誰かと)

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