好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!
 突然、赤ちゃんが泣きだした。おおよしよし、とあやしながら蒔田は赤子を肩に引っ掛けるように抱き、背中をさすり続ける。見たこともない、蒔田の姿。

 女性の手が蒔田の手に重なる。と思ったら、同じように赤ちゃんの背をさする。

 そして二人は歩き始める。

 彼女は、二人が消えていくのを、呆然と見送っていた。

 * * *

 頭のなかがぐるぐる渦のように渦巻いて、考えがまとまらない。

(いつか蒔田さんの言っていた、『真咲』さん……?)

 あの女性が? ……いや。あんな小さい子を抱えて東京に来る理由が普通あるだろうか。地元は石川のはずだ。蒔田と古いつき合いならば。だったら、

(蒔田さんの……?)

 思えば、自分は蒔田のなにを知っているのだろう。出身地すら知らなかったのだ。年齢は。出身校は。身長、体重、誕生日……そんな基本的なことですら、知らない。

 それでどうして恋に落ちることができるのだろう、ひとは。
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