好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!
 電車はカーブに差し掛かる。

 彼女は、倒れないよう、注意して立っていた。上京して一年半以上が経つのだ。もはやこの程度の揺れでかかとを鳴らすようなヘマなどしない。

 一拍置くと、蒔田は彼女の目を見据えて言った。「きみに誤解されようが、それで構わないと思っていた」

 彼女は、二三歩つんのめってしまった。

 うえを見あげた。蒔田の顔が、さっきよりも近くにあった。身長差が二十センチ近く。蒔田は、厳しいような、険しいような、他人を拒絶するような目をしていた。

 彼女は、自分の手が震えているのを感じた。

 同時に、核心に迫るときの恐れに似たものを感じていた。だから言葉にして放った。「あの。それってどういう……」

 タイミング悪く。

 電車のアナウンスが入った。「千歳船橋(ちとせふなばし)、千歳船橋です」

「じゃあ、な」
「お、お疲れさまです」彼女は頭を下げた。

 去っていく蒔田を見た。真っ直ぐ前を向いたその横顔。彼の着る黒いコートが人混みの中へと消えていく。
 電車のドアが閉まった。
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