好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!

 * * *

「回覧です。リーダー会議の資料ですので、ここに置いておきますね」
「ありがとう。一色くんは? どう?」
「どうもなにも、……あたし、一色くんの隣の席に移動したほうがいいかもしれないです」
「結構聞きに来るタイプなんだね、彼」
「まあ、……聞かずに勝手に進められるよりかはマシですけど」どちらかといえばそちらのほうが厄介だ。それでもため息が出てしまう。

「よくも言えたもんだな。自分が新人だった頃を忘れて」

 誰の声かと思った。いや、聞き間違うはずがない。

 あのひとの声を。

 振り返れば、蒔田が薄い紙束を、柏谷の机のうえに置いているところだった。彼は彼女を見て首を振った。「おまえが新人だった頃は酷かったぞ。あんなもんじゃない」
「酷かったってそんな」
「みんな忘れちゃうんだよね、自分が新人だった頃なんて」
「そういう蒔田さんや柏谷さんの新人の頃はどうだったんですか」
「おれか? いまと変わらない」

 ああそうでしょうね。
 と彼女は内心で返事をする。「柏谷さんは最初っから優秀な新人だったんですか」
「でもない。宗方さんに怒られてばっかだったなあ」

 と言いかけた口を彼女は押さえた。危ない、危ない。
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