好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!
 彼女の驚きに気づかず桐沢は一色に話しかける。

「そ。そっち混ざっていい? おれら二人で来てんだけど」
「いいよ」答えたのは柏谷だ。どうやら彼女を素通りし、奥の席に座る様子。

 俯いたままため息を噛み殺す。

(出来れば、会いたくなかった……)

 桐沢遼一は、彼女の同期だ。配属先が違ったのを、彼女は心の底から喜んだ。なるべくなら関わりたくない相手だから。

 もう、二度と。

(トイレ、行ってこよ……)

 彼女は誰にも言わずに席を立った。注文するのは、一色か桐沢がやってくれるだろう。

 * * *

「げ」
「紘花ちゃん、なしておれ見るたび『げ』って声に出すん? なして?」
 個室トイレの前に桐沢遼一が立っていた。
 ご丁寧にも男女共用だ。
「空いてるよ」と彼女は意識して冷たく言う。
「おれトイレになんか用ないもん」
「じゃあなにしに……」自爆。
 会話が嫌な方向に向かいかけるのを感じ、彼女は目を逸らした。
「元気してんの? 紘花ちゃん」
「その、紘花ちゃん、てのやめて」
「なんでぇ? 紘花ちゃんとおれの仲やんか」
「本当に、もう……」関わりたくないのだ。
 なかったことにしたいのだ。
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