治療不可能な恋をした
なにも言い返せなかった。ただ、うつむいたまま、拳を握る。
理人が少しだけ息を吐いて、静かに尋ねた。
「……そんなに、俺の気持ちが迷惑か?」
「!」
理人の表情に、梨乃の胸が痛んだ。迷惑とか、そんなのじゃない。そんなこと、思ったこともない。
喉の奥で詰まりそうな声を、それでもなんとか無理矢理押し出す。
「違う……!そうじゃない」
梨乃の声は、かすれていた。
「じゃあ何?」
理人の声が、少しだけ熱を帯びる。
「……だって、好かれる理由もわからないのに、“信じろ”って言われても……困る、から……」
ほんの一瞬、理人の表情が曇った。
「……なら、理由並べれば納得すんのかよ?」
やけくそ気味に、彼は言葉を連ねた。
「所作が綺麗とか、声が好みとか、華奢なところが守りたくなるとか、笑った顔がすげえ可愛いとか……そうやって全部言えば信じてくれんのか?」
梨乃は目を見開き、言葉を失う。理人は目を逸らさず静かに続けた。
「……全部、わかってんだよ」
理人の声は低く、まっすぐだった。責めるでも荒げるでもなく、ただ、ありのままを伝えるような響きだった。
「慎重で、不器用で、自分をすぐに下げようとすることも。……でも、それも含めて──俺は、好きだって思ってた」