治療不可能な恋をした
沈黙が降りた。
夜の通用口。外灯の明かりが、二人の影を長く伸ばしている。
(そんなふうに……思ってたの…?)
けれど、それでも返す言葉が出なかった。どうしても、気持ちがまとまってくれない。
理人が、わずかに目を伏せたまま言った。
「気持ちを無理やり押しつけたいわけじゃない。……でも」
その言葉のあとに落ちた静けさが、ひどく切なかった。
夜風が頬をかすめていく。
理人の姿は穏やかに見えたけど、梨乃には、彼の胸の奥からあふれる熱が、痛いほどに伝わってきた。
「もう二度と、“なかったこと”にだけは、絶対にしねえから」
それだけを言い残し、理人は静かに背を向けた。そのまま病院内へと戻っていき、やがて背中が視界から消えた。
「……」
梨乃はその場に立ち尽くしたまま、動けなかった。
胸の奥が、ぎゅうっと締めつけられるように痛む。
手を当ててみても、燃えるような熱も、激しくなる鼓動も……どうすることもできなかった。