治療不可能な恋をした
頬がわずかに熱を帯びる。けれど、もう目は逸らさなかった。むしろ、その想いに自分から向き合おうとしているのが、自分でもわかる。
理人がそっと、梨乃の手を取った。
その動作は驚くほどやさしくて、心の奥にじんわりと染み込んでくるようだった。
「……ちょっとだけかよ」
理人は冗談めかして呟いたが、その表情には隠しきれない喜びが滲んでいた。
梨乃は思わず笑ってしまう。そして、握られたその手を、今度は自分からぎゅっと握り返した。
(彼を、信じてみたい……)
彼を好きな、自分を信じたい。
そう願い、心が少しずつ、温かくなっていく。
「……でも、もう、逃げないよ」
静かに、けれど決意を込めてそう告げる。
ふたりの間に、言葉よりも深く、確かな気持ちが流れる。視線が自然に交わり、心の距離が少しずつ近づいていく。
「……仁科、俺……」
風の音すら止んだような静けさのなか、理人の穏やかな声が鼓膜をくすぐる。
「 ……お前のこと、ずっと好きだったよ。今も好きだけど」