治療不可能な恋をした
その言葉は、どこか不器用で、でもまっすぐだった。少しだけ照れをにじませたその声音に、梨乃の胸がやさしく揺れる。
静かに、けれど確かに伝わってくる彼の真心に、梨乃の頬が自然とゆるんだ。
「……そっか」
ふっと笑顔になる。その笑みは、これまでの不安や迷いをすべて溶かすように、やわらかで、あたたかい。
そして、梨乃はゆっくりと心を決めるように、息を吸い込んだ。
「私も、逢坂くんが好き」
目をそらさず、まっすぐに伝える。
「……ほんとは、たぶん……あの日から、ずっと」
自分の気持ちを隠さず、飾らずに伝えられたことが、嬉しかった。不器用にでも真剣に寄り添ってくれた理人の姿が心を溶かしてくれたのだと、今ならはっきりと言える。
理人の目が静かに見開かれ、微かに震えた。
ふたりの間の距離が、ごく自然に、ふわりと縮まる。
──次の瞬間、梨乃はそっと目を閉じた。
理人の唇が、やさしく触れる。
それは確かに重なった。迷いを超えた先で初めて交わす、想いの温度だった。
病棟の夜は静かだった。けれど梨乃の胸の内には、静かに火が灯るような確かなぬくもりが広がっていた。
もう、逃げない。
もう、自分を疑わない。
いまここにある気持ちを信じて、梨乃はそっと、もう一度、理人の手を握った。