治療不可能な恋をした

「……何か、飲む?」

そう尋ねられたけれど、梨乃は首を横に振った。

声を出したら、震えてしまいそうだった。

理人はそれ以上何も言わず、ベッドの横をすっと通り過ぎた。

いつもの彼らしい、自然体で気を遣わない所作。それが今は妙にやさしく見えて、梨乃の胸の奥をふるわせる。

「ここ、座って」

そう促され、梨乃はベッドの端にそっと腰を下ろした。ふわりと沈み込むマットレスの感触に、身体が一瞬だけほぐれそうになる。でも、心はまだ追いついてこない。

(怖いわけじゃない。緊張してるのは、きっと──)

前よりずっと、彼が好きだから。


今夜を、ただの気まぐれや衝動にしたくない。
昔とは違う。きちんと、気持ちを形にしたかった。

ふと、理人が隣に静かに座った。

「……仁科」

ゆっくりと呼ばれた名前に、梨乃は肩を小さく揺らして顔を向ける。

理人はまっすぐに梨乃を見ていた。その瞳の奥にある迷いのなさに、思わず息を呑む。

「これからはもう、ただの独りよがりになんかにしないから」

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