治療不可能な恋をした
痛くなるほど高鳴る鼓動。けれど、そこにあるのは不安ではなかった。
「……あの、さ……」
一瞬だけ唇が離れ、理人が梨乃の頬にそっと手を添える。その指先は驚くほどやさしく、梨乃は自然と瞼を開く。
「……そういう仲になったわけだし。梨乃って、名前で呼んでいい?」
伺うようなその声に、梨乃は笑って頷いた。
嫌なわけがなかった。梨乃の気持ちはもう、はっきりとここにあった。
理人が再び唇を重ねる。今度はずっと深く、存在を確かめるように。背に回された腕に引き寄せられ、ふたりの身体の距離が縮まっていく。
薄暗い部屋の中、静かな呼吸と鼓動だけが重なりあって、時がゆるやかに流れた。
理人の指が梨乃の髪をそっとすくい、耳元を撫でる。その繊細な所作ひとつひとつが、まるで想いの証のようで、梨乃の胸をじんわりと熱くした。
服の端に触れる手も、どこまでもやさしかった。けれど迷いのない温もりに包まれながら、梨乃は自分の身体をゆだねていく。
(恥ずかしいけど……すごく、しあわせ)
向き合い、確かに選んだこの夜が、梨乃の中に深く刻まれていく。
唇が、首筋に触れ、肩に触れる。繰り返されるやさしいキスに、梨乃の身体は静かに震えながらも応えていた。
服の重なりが一枚ずつほどけていくたびに、胸の奥にあった迷いもひとつずつ溶けていくようだった。