治療不可能な恋をした

腕から抜け落ちた服が、ぱさりと床に落ちる。そのままそっと背中からシーツに倒されると、理人の顔が胸元に降りてきた。

幾度目かのリップ音のあと、ちくりと、小さな痛みが走った。

「っ…」

「ごめん、痛い?」

「ううん……ちがくて…なに?今の」

「キスマーク」

あっけらかんと言いながら、理人は愛しげな目で、痛みのあった場所をそっと撫でた。

「俺のもんって証。ダメだった?」

その独占欲のにじむ台詞に、かっと頬が熱くなる。ほとんど反射的に首を振ると、理人の顔がふわっと笑顔に崩れた。

「じゃあ、遠慮なく」

本当に言葉どおり、理人はさらりといくつかの痕をつけていく。いじらしくて、くすぐったくて、恥ずかしい。けれど、嫌じゃなかった。

(……あれ?でも、これ……)

ふと、梨乃の頭に冷静な思考がよぎる。

(お風呂入ったときとか、思い出しちゃうんじゃ……)

そう思った途端、恥ずかしさが一気に限界突破した。

「おっ、逢坂くん!や、やっぱりだめ!」

くっと弱い力で押し返すと、不満げな理人の顔と目があった。

「なんで」

「だ、だって……」

拗ねたようなその表情が、妙にかわいくて。思わずにやけそうになりながら、梨乃は顔を手で隠すようにして、かすれた声で言った。

「お、思い出しちゃう……から」

「……」

「お、お風呂とか…着替えとか、その度に、思い出しちゃうから……恥ずかしい」
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