治療不可能な恋をした
──どれくらい時間が経ったのか、わからない。
ただ全身がまだふわふわと浮いているようで、手足の先まで体を重ねた余韻が残っていた。
梨乃はベッドの上に横たわったまま、薄いシーツを胸元まで引き寄せていた。まだ呼吸は浅く、身体の奥がかすかに脈打っている。
部屋の向こうから、小さな音が聞こえた。
やがて、冷たいペットボトルが頬に触れた。
「水持ってきたけど、飲む?」
理人もまた上半身は裸のままスウェットを履いただけのラフな姿で、髪も首筋もほんのり汗ばんでいる。彼はベッドの縁に腰かけると、そっと梨乃の額に手を伸ばした。
「……大丈夫か?」
梨乃は少しだけ上体を起こし、頷いた。受け取った水をひと口飲むと冷たさが喉をすべって、ほんの少し現実に戻された気がした。
「ありがとう。……逢坂くんのは?」
そう聞くと、理人はにやりと笑って梨乃の手ごとペットボトルを取る。そのまま一口飲むと、ふっと息を吐いて、梨乃の肩を引き寄せた。
「梨乃」
「……ん?なに」
「今日はこのまま、泊まってってよ」
囁く声は、さっきまでとは打って変わって優しいのに、どこか拗ねたような響きが混じっていた。
背中からまわされた腕が、ぎゅっと抱きしめてくる。ほんの少し、熱っぽさの残る体温が心地いい。
「いいよ」