治療不可能な恋をした
. . 𖥧 𖥧 𖧧


デートの待ち合わせ場所は、駅前の噴水広場だった。

休日の午後、人波の中を歩きながらも、梨乃の心は妙にそわそわと落ち着かなかった。

(遅れてないはずだけど……逢坂くんはもう着いてるかな)

駅を出た瞬間、目が合った。

──理人がいた。

一歩引いた場所で、ポケットに手を突っ込んだまま壁に寄りかかるように立っている。ラフな服装のくせにやけに様になっていて、通りすがりの女性たちがちらちらと視線を向けているのが目に入る。

(……やっぱり目立つなぁ)

そう思っていたそのときだった。

理人の目が、ぱちりと開かれた。

時間にして3秒ほど。言葉も動きもなく、梨乃をまっすぐ見つめたまま静止した。

「……逢坂くん?」

そばに駆け寄り、居たたまれず声をかけると、理人はようやく口を開いた。

「……やば」

「え?」

「今日の格好。誰にも見せたくないくらい可愛い」

そう言って一歩、距離を詰める。

「このまま俺の家直行でいい?」

「だ、だめだよ!」

即答したものの、頬はさっきからじんわり熱い。

今日のため、いつもよりずっと時間をかけて準備した。

白いブラウスに、くすみピンクのロングスカート。髪はゆるく巻いてハーフアップにまとめ、耳元には小さなパールのイヤリング。

ほんのり色をのせたリップも、鏡の前で何度も確認してきた。

やりすぎじゃないか。彼の隣に並んで浮かないか。

そんなことばかり考えて、ついさっきまで迷っていたのに──彼の言葉ひとつで、その不安が一瞬で吹き飛ばされる。

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