治療不可能な恋をした
ふたり並んでショーケースの前へ。中には色とりどりのケーキが並んでいる。
ベリーが宝石のように輝くタルト、丸ごとの桃に包まれたムース、幾重にも重なった濃厚そうなチョコレートのオペラ──どれもキラキラしていて、まるで小さな芸術品だった。
「ぜんぶ、すごく綺麗……」
思わずこぼれた梨乃の声に、理人は隣で覗き込むように言った。
「梨乃はどれ食べたい?俺の分も好きなの選んでいいよ」
「え、どうして?逢坂くんも自分の好きなの頼めばいいじゃない」
「俺はどれでも美味しく食べられるから。それに、目的はケーキじゃないし」
「どういうこと?」
梨乃が思わず聞き返すと、理人は視線を外さずさらりと微笑んだ。
「シェアしたいなって。梨乃が選んだの、俺もちょっとだけどもらって……あわよくば“あーん”とかしてもらえたら最高だなって」
「なっ……!」
反射的に見上げた梨乃の頬は熱く染まり、理人はおどけたように片眉を上げて、どこか嬉しそうに笑った。
「……っていうのは、半分は冗談」
そう言いながら、少しトーンを落とす。
(は、半分は本気なんだ……)
そのニュアンスに気づいてしまったせいで、梨乃の心臓がドクンと跳ねた。
「ほんとはさ、梨乃の好きなものを知りたかっただけ」
その言葉はごく自然な声音だったのに、なぜかケーキよりずっと甘くて、息が詰まりそうになる。
からかっているんじゃない。彼のまなざしが、ふざけたあとにふっと真剣になるから、どうしても胸がざわめいてしまう。