治療不可能な恋をした
だけど次の瞬間、彼の声がふっとやさしくほどける。
「好きだよ」
嬉しそうに微笑むその顔は、まるで自分に向けての言葉のように甘かった。
「お決まりでしたら、お伺いしますね」
ちょうど店員が声をかけてくる。梨乃は慌ててガラスケースの前から顔を上げ、選んだふたつを指さした。
「白桃のタルトと、チョコとベリーのケーキをお願いします」
「かしこまりました。お席までお持ちしますので、そちらでお待ちください」
注文を終え、ふたりで並んで席へと戻る。
カトラリーが整えられたテーブルに腰を下ろすと、さっきまでのやり取りが少しずつ余韻になって、梨乃の胸の奥に広がっていく。
そんな中、理人がぽつりと口を開いた。
「梨乃って、フルーツ系好きなんだ?」
「え?」
「ケーキ。桃と、ベリーのやつ。ふたつとも果物メインだから」
「あ……うん、そうかも。さっぱりしたのが好きなのもあるけど……」
そう答えながら、梨乃は視線をふと落とす。言葉を継ぐのが、なんとなく気恥ずかしかった。
「一番好きなのは、チョコとベリーの組み合わせかな。甘いのと、ちょっとすっぱいのが合わさってるのが、なんか…いいなって」
「わかる。俺もその組み合わせ好き。甘いだけじゃないとこが、食べやすくていいよな」
理人が楽しげに頷く。その何気ない共感が、妙に心に残った。
(こんなふうに、好きなものに同じ反応してくれるの、ちょっとうれしいな……)
言えない気持ちをごまかすように、梨乃は紅茶用のスプーンを指の中でくるくると回す。
──そのとき。
「お待たせしました。ケーキセットになります」
店員の声に、ふたりが同時に顔を上げる。