治療不可能な恋をした
運ばれてきたトレーには、ふたつのケーキと、それぞれの飲み物が丁寧に並んでいた。
「わあ……おいしそう……」
梨乃の口から自然と漏れた声に、理人も目を細める。
「だな。なんか、食べるのもったいないくらい」
「そうだね」
梨乃は白桃のタルトに目をやりながら、そっと紅茶に口をつけた。
香り高い茶葉の風味が広がる中、向かいで理人がフォークを手に取る。
「まずは、どっちからいく?」
「えっ……あ、じゃあ、白桃のタルトから……?」
「了解」
軽く返事をすると、理人は自分のフォークにひと口分を乗せて梨乃の方へ向けた。
「はい、梨乃。どうぞ」
「……っ、はい!?」
反射的に手を出しかけて、思わず止まる。理人はまるで当然のように、自然な笑顔を向けていた。
「言ったじゃん、“あわよくば”って」
「それは冗談って……!」
「うん。半分だけね」
恥ずかしさに耐えきれず目をそらしながらも、理人のあまりにも嬉しそうな顔に負けて、「一回だけだからね……!」と小さな声で応じる。
フォークが唇に触れると、桃のタルトのひんやりとした甘さが広がった。
まるで、理人の甘やかしごと口に入ってきたような味がした。
そして今度は、理人が期待を込めた目でこちらを見つめてくる。