治療不可能な恋をした

「か、からかってないで、はやくどれにするか選んで!」

その声音は拗ねたようで、けれど頬は真っ赤に染めたまま、どこか照れ隠しの甘さが滲んでいた。

理人は口元に笑みを残したまま、「悪かったよ」と軽く返し、ゆっくりと箱を受け取る。

中には色とりどりのゼリーが整然と並んでいた。透き通る琥珀色の柑橘ゼリー、淡い紫にベリーを浮かべたもの、薄緑のキウイとミントの組み合わせ──まるで小さな宝石箱のようだ。

「きれいだな。それにうまそう」

「でしょう?だからついたくさん買っちゃった」

梨乃は箱を覗き込みながら、指先で縁をなぞるようにして視線を巡らせる。

「逢坂くんはどれにする?」

「俺から?」とわずかに眉を上げたが、その目は楽しげだった。

「うん。この間のケーキは私に選ばせてくれたから」

「ふうん。じゃ、遠慮なく」

そう言って理人は少し迷った末、「なら俺は……これにする。柑橘のやつ」と指差す。

「じゃあ、私はこれかな。ブルーベリーとラベンダーのやつ」

それぞれが選んだゼリーを小皿に移すと、ぷるんと瑞々しく揺れ、涼やかな香りがふわりと立ち上る。

梨乃がスプーンを差し入れ、ひと口すくって口に運ぶ。舌に広がる優しい甘みと香りに、唇の端がわずかにほころんだ。

「……美味しい」

その柔らかな笑みを横で眺めながら、理人は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。

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